第36回 美浜美術展を訪れて
- junichihakamaki
- Jan 25
- 3 min read
——「令和神奈川沖浪裏」と、空へ向かう視線——
今週、叔母と一緒に第36回 美浜美術展へ行ってきました。雪が降り出しそうな、身を切るように冷たい一日でした。福井の冬特有の、空気が張りつめた吐く息が白く、空の色が低く沈んで見えました。京都から福井に到着した時には数℃低いと感じました。

今回この美術展を訪れた理由は、福井県知事賞を受賞した自分の油絵作品を、この目で見るためです。会期は1月16日から25日まで。会場は、福井市にある福井県立美術館・2階展示室。静かな館内に足を踏み入れた瞬間、時間の流れが少しだけ遅くなったように感じました。

展示されていた自作の油絵のタイトルは「令和神奈川沖浪裏」。この作品は、葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》からインスピレーションを受けて制作しました。北斎は、巨大な波を画面の主役として押し出し、人や船を呑み込もうとするその一瞬を切り取っています。波は力であり、恐怖であり、自然そのものです。

一方で、僕がこの作品で選んだのは、まったく逆の発想でした。波ではなく、空。動きではなく、静けさ。迫りくる瞬間ではなく、その前後に広がる時間。空を画面の中心に据え、雲の層や光の重なりによって、世界全体のスケールを描こうとしました。海は存在していますが、それは主張するものではなく、空を受け止めるための舞台として配置されています。北斎が「下から見上げる世界」を描いたとすれば、僕は「上から、あるいは内側から世界を見つめ直す」構造を選んだのかもしれません。

油絵ならではの重なった絵肌、空気を含んだ色彩。遠くを見つめる人物の背中は、見る人自身の視線と重なり、鑑賞者を風景の中へと静かに引き込んでいきます。それは激しさではなく、祈りに近い感覚かもしれません。

今回、一緒に会場を訪れた叔母は、僕が小さい頃からずっと面倒を見てくれた、とても大切な存在です。言葉にしなくても伝わる距離感で、並んで作品を眺めてくれました。その時間は、賞をもらったこと以上に、静かで深い意味を持っていました。

展示を見終え、美術館を出る頃、頭の中ではすでに次の制作が始まっていました。次回・第37回美浜美術展への出展も予定しています。今回の展示を通して、新しい題材のイメージが自然と立ち上がってきています。まだ言葉にはできませんが、確実に「次の一枚」へとつながる感覚があります。

冬の始まりの寒い一日。自分の作品と向き合い、過去と現在を振り返り、そして次の未来を思い描く。そんな、静かで濃密な時間を過ごすことができました。



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